[学会参加報告]2019年7月6、7日に岡山コンベンションセンターで開催された第31回日本運動器科学会に参加してきました。
2019年7月6、7日に岡山コンベンションセンターで開催された第31回日本運動器科学会に参加してきました。
ロコモ・フレイル・サルコペニアについての最新の定義を含めて理解できました。ロコモは関節疾患や転倒に起因し、立つ・歩くといった運動器に着目したものです。フレイルは年齢による衰弱に起因し、高齢者を身体的・心理精神的・社会的など多面的に捉えていく必要があるということを学びました。また、フレイルは非可逆的で、身体的には筋力低下や低栄養で、心理・精神的には認知機能障害や精神面の問題が、社会的には独居であったり経済的困窮が問題となることなどを理解できました。サルコペニアについては筋肉や筋力に関して注目する概念であることを理解できました。筋力低下とそれに伴う機能障害(握力や歩行能力)を予防することが重要です。
ロコモの人がフレイル(衰弱)になっていることを考えると、リハビリ職にできることは関節疾患や骨折後の患者に対して適切なアプローチを行うこと、転倒予防に注力することも重要となってきます。また、ロコモは定義上、若年者でも該当する可能性があるため、注意喚起が大事です。
癌とロコモの関係において私達医療職が念頭に置かなければならないことは、癌があるから癌治療を優先するということではなく、癌は並存疾患と捉えて原疾患の治療を妨げない範囲で我々にできることを提供する必要があるということです。また、前立腺癌・メラノーマ(悪性皮膚癌)以外の癌は運動で抑制されるということも臨床で患者に知識提供していけると思いました。安静臥床すると、一日に2%の筋力が低下し、一週間で約10〜15%、3〜5週で約50%もの筋力低下が起こりうるので、癌患者だからといって、不必要な安静臥床でロコモディブシンドロームを作り出さないことが大事でだと学びました。
癌患者が増えている一方で、医療技術の向上により生存期間が延びています。そのため、癌と長く付き合うことが必然となってきます。その際にフレイル(衰弱)を許してしまっては、患者のQOL(生活の質)が低下する恐れが出てきます。運動器の専門家として患者教育にも関わっていく必要があると感じました。
骨折の既往がある患者には骨粗鬆症の確認や検査も推奨していく必要があると感じました。演題発表の際に、椎体固定術でインプラント周辺骨折が生じた例が複数提示されていました。あとで検査すると、骨密度の低下があったとのことです。その他の手術をする際にも骨粗鬆症があれば手術上のリスクとなる可能性もあることから、患者の骨密度についても把握しておく必要があると感じました。骨密度の検査を行い、現状を把握していただくことが重要だと実感しました。
また、一般的には非特異的腰痛は約85%と言われていますが、整形外科医が適切な機器を用いて検査すれば78%は明確な診断名がつくという話も新しかった知見です。実際の臨床でもMRI等を用いれば、非特異的腰痛以外の何らかの診断名がついています。今回の教育講演では、78%という数字が判明したので、今後の患者とのラポール(信頼関係)形成に役立てたいです。こういった現場の医師の努力で判明した数字というのは学会や研修会などで、積極的にアンテナを張っていかない限りは聞こえてきません。改めて、学会参加の重要性を感じることができました。